そんな気持ちで朝を迎えた。
何度も入院して痛い目にあっているからかもしれないけれど
傍からみても、ケロリとしているらしい。
自慢することじゃないけど、ね。
コロナ対応で、面会禁止になっているものの
手術をする際には不測の事態に備えて、必ず家族の立ち合いが必要で
手術室の前で、手術前後にちらりと面会ができ
手術中は1階で待機して、何かあった場合に家族には備えてもらう必要があるということ。
点滴棒をガラガラと引っ提げて、歩いて手術室に向かう。
手術室の前には、神妙な顔をした家族が何組か座っている。
その中にカンチを見つけ「行ってくるわ」と言ったような記憶。
寝たきりになった重症なお年寄りのベッドに
すがって泣き声になっている人たちを見たことがあるけれど
点滴棒を転がしながら、あっさりと手術室の自動ドアをくぐった。
これがもし反対の立場だったら、私はしょげていたかもしれない。
そう思うとカンチに感謝。
こんな伴侶をもっていると、カンチも鍛えられるというもの。
たくさん並んだ手術室の奥のひとつに案内され
手術台に上がって、右手に血圧計、胸に心電図…
カバっと吸入マスクをはめられた数秒後、私は意識を無くす。
簡単なもんやね(^^;
これに抵抗できる人はいない。
このあと人工呼吸器を装着されたらしい。
どれくらい時間が経ったんだろう。(実際は2時間ほど)
肩をポンポンと叩かれて名前を呼ばれる。
はい、と返事するものの、ここがどこなのか、何をしていたのか、状況が理解できず
終わりましたよという声に、やっと事態を飲み込む。
ベッドのまま手術室を出ると、またカンチの顔。
大丈夫か?と覗き込むカンチに、大丈夫!と発すると
なぜか声がかすれていた。
たぶん人工呼吸器を装置していたからだろう。
はきはきと答えるよりは、術後らしかったか?f(^^
そのまま病室へ運ばれる。
あとはうとうとと数時間、すっかり麻酔も冷めて、自分で手洗いにも行った。
腕の骨の頭、砕けた骨はすべて拾い、元の位置に戻してくれたそうで(そんなことができるのか)
腕の骨に沿って縦長の10㎝のプレートを入れて
プレート上の部分を長いネジ5本で、下の部分を短めのネジ3本で止めたらしい。
そのために、ネジを打ち込んだ2か所を切開したという。
不思議なのは、痛みが全くないこと。
膝の腱の手術した際はのたうち回るほど痛み、モルヒネを打ってもらったから
今回もある程度覚悟していたものの、拍子抜けするくらい痛みがない。
奥の方にずっしりした重さがあるものの
看護師さんから勧められるまで痛み止めを頼まないほど。
更に驚いたのは、3日目にして初めての傷口の消毒。
それまでは傷口を触らない。
消毒も、綿棒でちょんちょん!
薬も何も塗らずにガーゼをあてただけ。
その上に防水シートを貼って、はい!シャワーも浴びていいですよって。
外科というのは、本当に分かりやすいと感心。
嬉々としてシャワーの準備をするものの
さすがにひとりではシャワーできず、ヘルパーさんに手伝ってもらうことに。
私は左手を右手で支えたまま動けず
まるで犬洗いのように、されるまま。
だけどさっぱり!すっきり!
長靴を履いて、汗をかきながらお手伝いくださっているヘルパーさんの
手際のいい仕事ぶり、気を紛らわせる楽しい会話に感謝する。
歩くよう促され、外科病棟の周り、結構距離があるので
ぐるぐるぐるぐると早足に歩く。
これじゃまるで回遊魚!と笑えてくる。
通過する病室の隙間から見える患者さんの様子は様々で
若者の多くはスポーツで骨折したように想像でき、総じて元気。
一方消化器外科の患者さんはどんよりしんどそう。
1周回っても2周回っても、時間が止まっていた。
コロナ対応で、病院の入り口で発熱外来を分けているからだろうか。
入院病棟では患者はマスクを義務づけられておらず
自主的にマスクをしている人はいるものの、少数。
私も入院前は気になったので、マスクを何枚も持参していたけれど
個室ということもあり、パジャマになった途端、マスクをしなくなった。
むしろ患者は、切った貼ったの痛みに気がいっていて
下界にいるより、ずっとおおらかだった。
少なくとも私は入院中はコロナを忘れた。
結局は何が一番気になっているか、何が一番大変かに尽きるのか。
「コロナ<手術」で、コロナを忘れた。
世の中の大騒ぎをよそに、人間て勝手なもの、現金なものだと苦笑い。