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ピアノと私

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実は私もピアノを弾いていた…そう過去形。
今は指が痛くて弾けなくなったけど
結婚してからも、実家にピアノを置いたまま、マンションサイズのピアノを買い直したくらい。

小さいころ、お気に入りのテレビCMが始まると、おもちゃを放り出してテレビに走り寄り
お尻ふりふり踊っていた…らしい。(笑)

最初の楽器との出会いは小学校1年の時、オルガンだった。
駅前の音楽教室に通って、先生の押さえる音や和音を当てっこ。
レ!ドミソシ!レファラレ!なんて叫んでた。
結構音感はよかったようで、楽しかった思い出がある。
教室の終わりに歌った歌を今も覚えている。
体を揺らしながら歌っていた。

♪ことりがね おまどでね おくびをふりふりきいてるよ・・・・
 ヤマハ ヤマハのおんがくきょうしつ♪(作詞サトウハチロー 作曲中田喜直)

オルガン教室を卒業したあと、ピアノを習いたい、ピアノが欲しいと泣いた。
実はその頃の私は、ものすご~くおとなしく、ものすご~く従順で
親戚中でも「こんなにやりやすい子はいない」と言われるほどで
親に逆らったことも、自分の意見を言うこともなかった。(信じて)
その私がピアノを習いたいと泣いた。よほどのことだったと思う。

どういう伝手からか、晴れてピアノを習うことになった先生は
一発で東京芸大に合格した、1日10時間以上ピアノを弾いているという
思い切り優秀な若い女先生だった。
厳しかった!本当に厳しかった!
10歳にも満たない子供のレッスンに、納得するまで終わらせてくれない。
せいぜい30分もしたら集中力が切れてしまうのに
1時間も2時間も、半分居眠りながらピアノに向かわされた。

目の前に広げられた楽譜は古典。
小学生にとって、モーツァルトって何者ぞ?という感覚だったから
ただただ言われる通りに一生懸命弾く。
ここはフォルテ…強く弾く…けど、先生はもっと強く!と言う。
え?もっと?これじゃだめなん?…機械的に音を強く出す。
曲と自分とがバラバラになりそうだった。

耳からは斬新な音楽がどんどん入ってくる。
身近な映画音楽や、モダンな音楽も弾いてみたい。
自分でそんな楽譜を買ってこっそり弾いていた。
でも、自宅でレッスンをして、そこに近所の人も来ていたので、隠し通せない。
楽譜が先生に見つかって…叱られた。
エレクトーンも一緒にやってみたいと言ったら
あれは電気機械で楽器ではありません!と一蹴された。しゅん。

悶々とピアノを弾いていた高校生のあるとき
急に、楽典の勉強や聴音、新曲視唱などがピアノのレッスンの前に始まり
辺りが何やら騒がしくなってきた。

なにごと?

なんと、音大に行くための準備が知らない間に始まっていたのだ。
それは先生と両親との間では、高校まで一生懸命ピアノを練習しているからか
当たり前の道になっていたようだ。
そういえば、進路について話したことがなかった。
周りは暗黙の内に音大に行くもんだと思っていたらしい。

いやや…私はこの世界で生きていけへん…行きたくない。

自分の才能はよくわかっていたので、久しぶりに反旗を翻す。
でもこれは手強かった。ピアノを買ってもらうより手強かったかもしれない。
ただ、ものすごく不幸なことに、私はピアノのレッスンが楽しくなかった。
それはつまり、ピアノも楽しくなくなっていた。
鬱積していたものが爆発したように、私は頑として音大受験を拒否した。

その後、別の大学で出会った音楽の先生が
折角やってたんだから趣味でも続けた方がいいと、自分の教え子を紹介してくださり
それから4年間は、その先生に習いに行って、やっと気楽にピアノを弾くことができた。
結婚してからは、友人の奥さんがピアノの先生だったので、時々ピアノを弾いて遊び
その奥さんが教える子供たちの発表会にも特別に出たりした。
連弾もして、楽しかった。
やりたいという曲を選んで、好き勝手に弾くことができ
ピアノが弾けてよかったと思うようになった。

今になって思う。
私の才能の有無は別にして、この前の前田扇さんのような先生に習っていたら
もしかしたら音大への拒絶がもっと少なかったかもしれないと。
作曲家の人物像とか、背景とか…そんな話を聞くことさえ思いつかなかった「あの日の私」
あれはあれで仕方なかったと思う。
以後、友人の結婚式にピアノを弾いたりして楽しい時間もあったから
弾けることには感謝したいし
あの時の苦しみが全て無駄だったとは思わないけれど
優秀な選手が優秀なコーチではないという言葉は、妙に納得している。

もちろん先生だけが悪かったわけではない。
私に先生を打ち負かすだけの才能がなかったのは確か。言い訳にならない。
だけど、もう少し楽しかったら道は違ったのかもしれないとも思う。

だからかな。
何事をするのにも「楽しい」というのはとても大事だと思っている。
まずは楽しいこと、そして能動的にやってみたいと思うことが大事。


久しぶりにピアノコンサートに行って、そんなことを思った。
やっぱり行ってよかった。





by doublestrings | 2017-11-06 15:14 | 音楽 | Comments(0)

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